国内企業のクラウド利用率は72%まで上昇
クラウド移行が進む理由と注意点を解説

国内企業のクラウド利用率は72%まで上昇
クラウド移行が進む理由と
注意点を解説

総務省が公開した令和5年版の情報通信白書によると、国内企業におけるクラウドサービスの利用状況は「全社的に利用している」が44.9% 、「一部の事業所又は部署で利用している」が27.3%で、全体の72.2%がクラウドサービスを利用していることがわかりました。また、利用しているクラウドサービスの内容でもっとも多いものが「ファイル保護・データ共有」の64.1%となっており、ファイルサーバのオンプレミスからクラウドへの移行が進んでいることを表しています。

今回は、ファイルサーバのクラウド移行が進んでいる理由と、オンプレミスからクラウドへの移行時に注意するポイントについて解説します。

参考:総務省「情報通信白書 令和5年版」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/datashu.html#f00250

INDEX

ファイルサーバのクラウド移行が進んでいる理由

近年、ファイルサーバのクラウド移行が進んでいる理由としては以下の5つが考えられます。

1. コスト削減および運用の利便性向上

オンプレミスは初期投資(サーバ機器の購入、設置、保守)が高額となります。加えて、ハードウェア更新や電力、冷却費用などのランニングコストも発生します。一方、クラウドでは初期投資が不要で、利用した分だけ料金を支払う従量課金制が採用されています。保守や運用のコストをクラウドプロバイダーが負担するため基本的にコストは不要です。また、スケーラブルなリソースで必要な分だけ拡張・縮小が可能などの高い柔軟性もあります。

2. 災害復旧とデータ保護などのBCP対策

オンプレミスでは災害対策も自社で実施しなければなりません。サーバ関連機器のみならず建物の耐震性や防災対策なども自社で実施する必要があり、大きな負担が生じます。もし物理的な被害を被った場合は、システムの復旧も自社で行わなければなりません。

一方、クラウドではサービス提供側が地理的に分散したデータセンターで可用性を確保しているため、システムが止まる可能性は非常に低くなります。万が一システムが止まった場合でも、復旧はサービス提供側が行うので負担は少なくなります。

3. セキュリティ面の負担軽減

オンプレミスの場合、自社でセキュリティ対策を実施しなければなりません。また、最新の脅威に対応するためセキュリティシステムや機器の定期的なバージョンアップが欠かせません。さらに、社内にはセキュリティの専門的な知識を持つ人材も求められます。

クラウドではセキュリティ対策(データ暗号化、アクセス制限、多層防御など)や最新の機器がサービスとして提供されています。運用を任せることができるため、専門的な知識を持つ人材が必ずしも必要ではなくなります。

4. 新しい働き方やビジネス環境の変化にも対応可能

近年では、働き方の多様性を進める手段としてリモートワークの導入が進んでいます。しかしオンプレミスではリモーワーク環境を整えるためのシステム構築が複雑になりがちなため、導入が遅れコストも嵩む傾向があります。

クラウドでは、インターネットがつながれば基本的に(海外も含めて)どこからでもアクセスが可能なため、リモートワーク環境の構築が容易です。

5. 技術革新の活用が可能

オンプレミスでは、導入時点が最新機器であり最新システムとなります。時間の経過とともに老朽化が進むので、新しい技術を活用しようと考えても、既存の機器で対応できなければ導入は難しくなります。

クラウドでは、サービス提供側が常に新しい機器やシステムを導入しています。(追加課金が必要な場合もありますが)オンプレミスと比べると最新技術を導入が容易です。

もちろん、すべてのケースでオンプレミスよりクラウドの方が適しているとは限りません。

クラウドはインターネットに接続することが前提のため、インターネットと接続ができない(たとえばセキュリティ上外部との通信を遮断する必要がある銀行システムなど)は、必然的に選択肢がオンプレミスのみとなります。また、自社で独自のシステムを運用している場合、機器やシステム構成の自由度の高さからオンプレミスを選択するケースもあります。

しかし、それ以外の特に中小企業では、ストレージはオンプレミスよりクラウドで運用した方が、コスト面においても運用面においてもメリットが大きくなります。また、クラウドは、システムの標準化による属人化の解消にも有効なため、クラウドへの移行が進んでいると考えられます。

オンプレミスとクラウドの違い
項目 クラウド オンプレミス
費用 初期費用不要、従量課金 初期費用+運用保守費用
サーバの拡張性 柔軟に変更可能 追加の費用および作業が必要
セキュリティと障害対応 サービス提供側が対応 自社で対応
クラウドの利用料金
クラウドの料金は基本的に使用した分だけ支払う従量課金性です。ただし、何に対していくらの課金が発生するかは、使用するサービスやクラウドの種類によって異なります。

たとえば、Amazonが提供しているクラウドサービスの「Amazon S3」は、「ストレージ容量」「リクエスト(アクセス)回数」「データ転送量(データ取り出し)」のそれぞれに料金が発生します。一方、Wasabiが提供しているストレージサービスは「ストレージ容量」にのみ料金が発生します。

データ移行時に発生しがちなトラブル

前述したように、ファイルサーバのクラウド移行には大きなメリットがあります。一方で、オンプレミスからクラウドへの移行には、トラブルが発生するケースも少なくありません。以下で、起こりがちなトラブルを4つ紹介します。

1. クラウドサービスの制限事項によってスムーズな移行ができない

一般的に、クラウドサービスには移行可能なフォルダ数や階層数などの制限事項があります。そのため、オンプレミスで使用していたファイル構造をそのまま移行できないケースがあります。特に大規模なファイルサーバでは、制限事項の影響を受ける可能性が高いため適切な対策が必要です。なお、制限事項はクラウドサービスごとに異なるため、どのサービスを選択するかによって対処方法も変わります。

2. ファイルが持つ情報のすべてを完全に移行することができない

通常、ファイルにはメタ情報(作成日、更新日、アクセス日、作成者、ファイルの種類、ファイルサイズなど)が付与されています。また、情報の漏洩や改竄を防ぐために、ユーザレベルごとのアクセス権限が設定されているケースもあります。

本来であれば、メタ情報やアクセス権限も含めて完全に移行できることが理想です。しかし、単純なコピー&ペーストでは、これらの情報や設定が正確に移行できず失われてしまう可能性があります。また、フォルダにアクセス権限が設定されている場合、そのフォルダにあるファイルそのものが移行できないケースもあります。

3. 不要なデータまで移行してしまいコストが増加する

前述したように、クラウドサービスは使用する容量が多ければ多いほど、使用するサーバの性能が高ければ高いほど料金は高くなります。

コストを削減するためには、不要なコピーファイルや数年以上アクセスがないファイルなど、移行する必要がないファイルは削除しておくべきです。また、年に数回程度しかアクセスしないファイルを高速で高価なメインのファイルサーバに移行すると無駄にコストが増加してしまいます。アクセス頻度が低いファイルは低速で安価なアーカイブサーバに移行するなど、より効率のよい運用方法についても検討しておくべきです。

4. 他部門からの協力が得られず作業が進まない

データの移行作業には、ファイルサーバを利用している部門の協力が不可欠です。しかし、ほとんどの部門は通常業務を優先しがちなため、移行作業への取り組みが後回しになるケースが多いようです。その結果、なかなかオンプレミスの運用が終了できず、無駄なコストが発生します。データ移行をスムーズに進めるためには、移行作業を各部門に任せ切るのではなく社内のリソースを一元管理して計画的に実行する必要があります。

データ移行時のトラブルを回避するために
移行サービス利用のススメ

数百GBや数TB程度のデータ移行であれば、手間も時間も大きな負担にはならず、前述したようなトラブルへの対応も社内部署で対応できるかもしれません。しかし、数十TB以上の大規模データの移行となると、かかる手間も時間も膨大になります。また、移行時に発生するエラーやトラブルの量や複雑さも増します。

特に、カスタマイズされた独自性が高いオンプレミスからのクラウド移行は、想定しなかったような複雑なエラーやトラブルが発生しがちです。情報システム部門の担当者が日常業務を抱えながら、これらのトラブルに対処していくのは現実的に難しいのではないでしょうか。

大規模ファイルサーバのクラウド移行を確実かつスムーズに進めるために、専門的な知識と経験を持つデータ移行のプロフェッショナルに頼ることを強くオススメします。

オンプレミスからクラウドへ
ARIによるファイルサーバ移行の手順

私たちARIでは、ファイルサーバ移行支援プロダクトを長年開発・提供してきた実績があります。その豊富な経験とノウハウを活かし、確実かつスムーズなデータ移行を実現するために、以下に挙げる5つのステップを実施しています。

Step 1:要件確認 データ容量、移行期間、ロケーション、作業環境、留意点などを確認
Step 2:データ移行検証 データ構成とクラウド移行ルールの照合、移行時間測
Step 3:移行計画作成 移行方式および移行スケジュールを作成
Step 4:データ移行実施 移行計画で定めた移行システムを使用して移行作業を実施
Step 5:移行結果確認 エラーが発生した場合は原因調査を行い、対策を講じる
Step 1:要件確認
データ容量、移行期間、ロケーション、作業環境、留意点などを確認
Step 2:データ移行検証
データ構成とクラウド移行ルールの照合、移行時間測
Step 3:移行計画作成
移行方式および移行スケジュールを作成
Step 4:データ移行実施
移行計画で定めた移行システムを使用して移行作業を実施
Step 5:移行結果確認
エラーが発生した場合は原因調査を行い、対策を講じる
移行手順で特に重要なステップはStep2の「データ移行検証」です。ここを疎かにすると、本番移行時に手戻りが発生する可能性が高まります。

ARIでは、ファイルサーバ容量可視化・分析システム「ZiDOMA data」による分析結果に基づき、移行元のデータ構成がクラウド移行ルールに適合しているかを判断して本番移行時の手戻りを防ぎます。

Step3では、ARI独自の移行ツールを用いて実環境の移行時間を測定します。この測定結果から、移行計画を正確に定めることができます。これらのプロセスを通じて、移行作業の精度と効率を最大限に高めています。

この5ステップは、私たちARIが長年の経験から導き出した、「確実、安全、スムーズ」なクラウド移行を実現するために、最低限必要なステップです。要件の内容や検証時に発覚した問題への対応などによっては、さらにステップが追加されるケースもあります。

なお、ファイルサーバ移行サービスの詳細については、こちらをご参照ください。

移行失敗のダメージは膨大
安易には考えず慎重な検討を

残念ながら、ファイルサーバの移行作業を「ファイルやフォルダを選択して別の場所にドラッグ&ドロップするだけの簡単な作業」と考える人は、いまだに一定数います。

しかし、データ量とファイル数が急増して階層構造が複雑になったファイルサーバを、ファイルに付与されたメタ情報やアクセス権も含めて、安全かつ確実に移行するのは非常に困難な作業です。万が一、データ移行に失敗してデータが失われた場合、業務の進行に大きなダメージが与えられる可能性もあります。

近年、業務で扱うデータの量は加速度的に増えています。データが増えれば増えるほど、ファイルサーバ移行時に発生する課題やトラブルは増え、複雑化していきます。

ファイルサーバの移行は、企業にとって非常に重要なミッションです。決して「データを移動するだけ」と安易には考えず、慎重かつ十分な検討をおこなった上で実施すべきです。

もしデータ移行について専門家の意見が必要であれば、私たちARIまでお気軽にお声がけください。移行担当の豊富な経験とノウハウによって、安全かつ確実なデータ移行を実現します。

※各サービスのロゴおよび名称は、各サービス提供企業の商標または登録商品です。

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