近年、ビジネスで扱うデータの量は急速に増大しています。それに伴い、データを管理・保存・共有するファイルサーバの重要性も高まっています。一方で、扱うデータの量や種類が増えるにつれ、ファイルサーバ管理や運用にかかる手間も増加してしまい、作業効率の低下や管理コストの増加を招くケースも増えています。
私たちARIは、長年にわたりファイルサーバ管理のソリューションを扱ってきました。今回は、その経験にもとづいた「ファイルサーバ管理の課題と、その解消方法」について解説します。
まずファイルサーバを管理・運用する際に生じる課題について解説します。代表的な課題としては、以下の4つが考えられます。
ファイルサーバを運用する際に生じる最大の課題は、データ量の急増による「慢性的な容量不足」です。近年は、画像や動画の活用範囲が大きく広がっています。たとえば建築現場などでも、報告書などに現場の写真や動画を添付することが一般的になってきています。また、画像や動画も高解像度化が進んでいるため、1ファイルのデータ容量が飛躍的に増加しています。
昨今は、Office関連ファイルにも画像や動画を添付するケースが増えています。たとえば、Wordファイルに1MBの画像を5枚添付すると、それだけで容量は5MBとなります。さらに、修正履歴の保存を設定した場合には、更新ごとに履歴分のデータ量が増加します。
| 画質 | 解像度 | HDを1とした場合のデータ量 |
|---|---|---|
| HD | 1280 × 720 | 1 |
| フルHD | 1920 × 1080 | 2.25 |
| 4K(4倍) | 3840 × 2160 | 9 |
| 8K(16倍) | 7680 × 4320 | 36 |
「念のため修正前のバージョンを残しておきたい」という理由で、元ファイルのコピーを残すケースがよくあります。特に重要なドキュメントでは、「念のため」の意識が強くなるため、コピーファイルの数が増える傾向があります。
もし、フォルダ内が以下のような状態になっていた時、「どれが最新なのか」を一見してわかる人は少ないでしょう。更新日から、なんとなくわかるかもしれませんが、ほとんどの人は「念のため」1つ1つ開いて確認したくなるはずです。ただ、この確認作業にかかる時間は、なんの生産性もない無駄な時間となります。
コピーが量産されたフォルダの例

2019年4月3日にオウケイウェイヴ総研が発表した調査報告によると、「 ビジネスマンが調べものに費やす時間は毎日1.6時間」とのことです。つまり、(1日の労働時間を8時間とする場合)労働時間の20%を調べものに費やす計算になります。
ファイルサーバでデータを検索する場合、一般的にはファイル名を「キーワード」で検索します。しかし、「どこ」を「なんのキーワード」で検索すればいいかがわからなければ、目的のファイルを見つけ出すことは困難です。
たとえば、ファイルサーバに以下のようなファイルが存在している状況で、Aのファイルを見つけ出すには、「2024年度10月」「ARI」「提案書」という3つのキーワードが必要です。言い換えれば、このキーワードのどれも知らない場合、該当するキーワードを探すことから始めなければなりません。このようになると、調べものをするためにさらに調べものをするという無駄な時間が増えてしまいます。
ファイル命名ルールが定まっていないケースの例
参考:
OKWAVE 2019年4月3日「【社内業務に関する調査】 ビジネスマンが「調べもの」に費やす時間は毎日1.6時間。6割超の人が調べものに時間を取られていると感じている結果に」
https://okwave.co.jp/ri/report/report190403/
ファイルサーバにおけるアクセス権限の管理は、データの情報漏洩や改竄を防ぐために必要不可欠です。しかしアクセス権限の管理は、非常に複雑かつ面倒な作業です。
新入社員が入社した時は、新たなアカウントに権限を付与しなければなりません。また、人事異動や退職者が発生した時は、権限の変更や、アカウントの削除が必要になります。セキュリティ対策の重要性が叫ばれる昨今は、アクセス権限の設定もより複雑さが増しています。一方で、設定の漏れやミスが発生すると情報漏洩のリスクが高まるため対策は必須です。
ここまで解説したファイルサーバの課題の解決策としては、以下に挙げる4つがあります。
1.不要なファイルを削除する
2.容量を追加する場合は使用頻度に応じてサーバを使い分ける
3.明確なファイル管理ルールを設定する。
4.ファイルサーバ分析システム・ツールを活用する
どの課題に対する解決策かについては、以下のようになります。
| 課題 | 解決策 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 課題1:慢性的な容量不足 |
1. 不要なファイルを削除する 2. 容量を追加する場合は使用頻度に応じてサーバを使い分ける |
|||||||
| 課題2:大量生産されるコピーファイルの存在 |
3. 明確なファイル管理ルールを設定する 4. ファイルサーバ分析システム・ツールを活用する |
|||||||
| 課題3:ファイルを探す時間と手間 | ||||||||
| 課題4:面倒なアクセス権限の管理 | ||||||||
| では、それぞれについて具体的に解説します。 | ||||||||
「容量不足」に対する解決策は、不要なファイルを削除するかサーバの容量を追加するかいずれかの選択肢しかありません。容量の追加にはコストが発生するため、まずは不要なファイルの削除から着手するのが一般的です。アクセス頻度が低いファイルや作成日時が古いコピーファイルなど、不必要である可能性が高いファイルから削除していきます。ただ、そのファイルが本当に不要なのかは作成者しかわからないケースもあるので、ファイル削除のスケジュールや確認の依頼など、社内全体に通達しておく必要があります。
もし、ファイルを削除しても容量が不足している場合は、ファイルサーバの容量を追加します。この際、アクセス頻度が高いデータ(ホットデータ)は高価で高速なサーバに、アクセス頻度が低いデータ(コールドデータ)は安価で低速なサーバに分類すると、単純に容量を追加するより業務効率の向上とコスト最適化が図れます。
コピーファイルや検索、アクセス権限の課題は「明確なファイル管理ルールの設定」によって解決が可能です。適切な管理ルールの設定と社内への周知徹底によりコピーファイルの課題や検索の課題が解消できます。なお、具体的なルールの例については後述します。
ここまで挙げた課題の解消策を実践するには、ファイルのアクセス頻度やフォルダ構造など、ファイルサーバの状況を把握しなければなりません。そのために必要な存在がファイルサーバの現状を可視化する分析システムです。
なお、分析システムには無料と有料があります。当然ですが、有料の方が分析できる項目も多く機能も豊富です。ただしコストがかかるので導入には十分な検討が必要です。どのツールを利用すべきかは、ファイルサーバの状態によって変わります。しかし、どのような状態かは、実際に分析してみないとわかりません。
そこでおススメな方法が無料トライアルの活用です。有料の分析システムには、そのほとんどに無料トライアルが用意されています。分析できる容量や項目などに制限はありますが、ファイルサーバがどのような状態にあるのかについて、おおよそは把握できます。まずは、無料トライアルで予備調査を行い、その上でどのようなシステムを導入するのかを検討することをおススメします。
前述した「3.明確なファイル管理ルールを設定する」について具体的な例を解説します。
私たちARIでは、長年に渡りファイルサーバ管理ソリューションを提供してきました。その経験から導き出した「ファイルサーバ管理のルール10選」が以下となります。
多くのファイルは、何らかのプロジェクトに紐づいています。そのため、年月日や社名などで管理するより、プロジェクトごとに管理する方が、「どこに」「なんのファイルがあるか」がわかりやすくなります。
メインで利用しているファイルサーバ上でのみ更新(編集)を行い、個人の端末や他のファイルサーバへのコピーを禁止して無駄なコピーファイルの生産を防ぎます。
以前は、ファイルサーバ上での作業は処理が重くなるため、ファイルを自分の端末にコピーするケースがよくありました。ですが、個人の端末にコピーされたファイルはアクセス権限の管理もアクセスログの取得もできません。この状態を放置しておくと、情報漏洩の危険性が非常に高くなります。更新作業をファイルサーバ上のみで行う理由は、このような状況を避けるためでもあります。もし、ファイルサーバ上で更新すると処理が重くなるのであれば、ファイルをローカル環境にコピーするのではなく、より高速なクラウドストレージに変更するなどファイルサーバの処理速度を上げる手段を検討すべきです。
一定期間以上アクセスがないファイルは、低速度で安価なアーカイブ用のコールドサーバに移動してコストを軽減することをおススメします。
一度、アクセス頻度が低いと判断してアーカイブサーバに移動したファイルでも、内容が更新された後はアクセス頻度が高くなる可能性があるので、メインのファイルサーバに移動します。
プロジェクトごとに管理している場合、フォルダ内にあるファイルは内容が紐づいているケースが多いので、アクセス頻度が低いファイル「だけ」を移動すると、全体の内容が把握できなくなる可能性があります。
アーカイブサーバに移動してから3年以上アクセスがないファイルは、今後利用する可能性が限りなく低いと考えられるため削除対象となります。なお、法律上長期間の保存が必要なデータもあるので、削除する際は関連する部署に確認が必要です。
ファイルのコピーはメールの送受信によっても発生します。また、メール添付によるファイルの送信は、誤送信による情報漏洩の危険性があるので可能な限り避けるべきです。
フォルダの統廃合を行う場合は事前に告知を行い、移行元となるフォルダ内には移行先のショートカットを用意して利便性を保ちます。同時に「○月○日にこのフォルダは消去します」などの告知メモを配置します。
たとえば「プロジェクト関係のファイルは最初にPJをつける」「続いて作成者の名前と半角英数で年月日(202412011など)をつける」など、ファイルやフォルダの名前について社内ルールを設けます。ただし、過去ファイルにまでルールを反映させるのは、作業量の観点からも現実的ではありません。
アクセス権限の確認を定期的に行い、人事異動への対応や退職者の権限削除を実施します。プロジェクトで、パートナーなどの外部ユーザにアクセス権限を付与している場合は、プロジェクト終了後、速やかに権限を削除します。
私たち、ARIはファイルサーバの可視化とデータ移行を実現するソリューションである「ZiDOMA」を提供しています。「ZiDOMA」が提供するシステムを利用すれば、各フォルダの使用率、更新/アクセス日時、所有者、拡張子の分布割合などを可視化しドリルダウンで分析も可能です。また、大容量データの分析結果をもとに肥大化の原因究明など適切な運用も可能です。
「ZiDOMA」は分析のみならず、データのコピー機能によりデータ移行(バックアップ)のサービスも提供しています。たとえば、メインのファイルサーバにあるコールドデータをアーカイブサーバに移行する場合、最終アクセス日やファイルサイズなどの条件を組み合わせて設定したポリシーをもとに、自動で移行を実施することができます。
なお近年、ファイルサーバの管理・運用において特に課題感が増しているものにアクセス権限への対応があります。テレワーク・リモートワークの普及による働き方の変化、クラウドを活用した外部パートナーとの共同作業などへの対応のため、アクセス権限の管理は非常に複雑かつ難解なものとなりつつあります。
現在、私たちARIではアクセス権限管理をサポートするプロダクトの企画・開発も進めております。こちらについては、詳細がわかり次第お伝えさせていただく予定となっているのでご期待ください。
ファイルサーバ統合管理ソリューション「ZiDOMA」は市場の変化やユーザからの要望に応じて、常に進化を続けています。
ファイルサーバ移行やファイルサーバ分析・管理に課題をお持ちの方、
ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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