絶対知っておきたいデータ移行時の落とし穴!
「Google ドライブ編」

絶対知っておきたい
データ移行時の落とし穴!
「Google ドライブ編」

近年、ファイルサーバをオンプレミスからクラウドに移行するケースが増えています。私たちARIにも、そのような依頼を数多くいただいています。
移行先の候補として多いのが(お客様の企業規模にもよりますが)AWSやAzureなどのような大手サービスですが、最近になって特に増えていると感じるサービスにGoogle ドライブ(※1)があります。
Google ドライブは、使い方がわかりやすく利便性が高いサービスですが、移行に関していくつかの制限事項があり、工夫が必要なケースもあります。
今回は、ファイルサーバをGoogle ドライブに移行する際に思いがけなく陥る落とし穴と、その対策方法について解説します。

※1:本文中に記載されているGoogle ドライブは共有ドライブを指します。

INDEX

ARIが行っているGoogle ドライブへの移行手順

ARIでは、Google ドライブへの移行についてご依頼をいただいた場合に、必ず2段階のステップを踏みます。具体的には、現状を把握したうえで移行検証を行う「PoCフェーズ」と、その結果をもとに実際の移行を行う「本番移行フェーズ」です。
このように段階を踏む理由は、Google ドライブを共有ドライブ(ファイルサーバ)として利用する場合にはいくつかの制限事項があるため、「既存ファイルサーバをそのまま移行できるか」、「制限事項に引っ掛かるため工夫や対策が必要か否か」などを確認する必要があるからです。また、転送速度についても既存ファイルサーバの状態によって大きく変わるため、検証を行って転送速度を測定しないと移行スケジュールが立てられないといった理由もあります。

ARIが実施しているデータ移行作業プロセス(イメージ)

Google ドライブの制限事項

Google ドライブをファイルサーバとして使用する場合の制限はGoogleヘルプセンターの「 Google ドライブにおける共有ドライブの制限 」に記載があります。この中で、特にデータ移行時に影響がある項目についていくつかご紹介します。

保存できるアイテム数は最大40万個まで

Google ドライブに保存できるアイテム数には40万個までという上限があります。なお、ここにある「アイテム数」には、ファイルだけではなくフォルダなども含まれます。
たとえば、1TBのデータがある場合、1ファイル1MBと仮定すると、ファイル数だけで100万個となります。そして、ビジネスで使用するファイルの大半は1MB以下です。このように考えると、制約事項として上限40万個はかなり厳しい数字であると言えます。

フォルダ階層は最大で20階層まで

Google ドライブでは、最大で20レベルまでネスト(階層化)できます。言い換えれば、フォルダの階層が21以上になるとデータ移行が不可能になります。
フォルダの階層は、ファイルサーバを使用していると知らぬ間に増えてしまっている場合があります。たとえば、最近のアプリケーションでは、インストールする際やデータを保存する際に自動的に下層階にフォルダが作成されるケースもあります。
またすでに、ある程度の階層下にあるフォルダのショートカットを作成して、そこにデータを保存し続けるなどの運用を続けていた結果、いつの間にか20階層を超えてしまっているケースもあります。
フォルダ階層は気がつかないうちに深くなりがちなので、本番移行前の確認が必須です。

1ファイルの最大サイズは5TBまで

Google ドライブでは、保存できる1ファイル当たりのサイズは最大で5TBまでとなっています。ただ、1ファイルで5TBを超えるケースはほとんどないので、この制限についてはあまり気にしなくても大丈夫でしょう。

1日にアップロードできるデータ量は合計750GBまで

Google ドライブは、1日(24時間)でアップロードできる最大データ量は合計750GBまでとなっています。
たとえば、5TBのデータを移行する場合、単純計算で約7日間という時間が必要となります。とは言え実際は、後述する転送速度の方が転送時間への影響が大きいので、この制限そのものが移行に影響する可能性は低いと言えます。

データ転送が低速な課題

Google ドライブには転送速度が非常に低速であるという課題があり、どれだけ強力なインターネット回線を利用しても、一定以上の速度は出ません。なお、この制限はGoogleヘルプセンターに記載されていません。あくまで、私たちARIの移行事例の計測値から推察した制限事項です。
ARIでは、これまで何度もGoogle ドライブへの移行作業をサポートしてきました。そして、どのケースでもGoogle ドライブへのデータ転送速度は0.5M/bpsから3M/bps程度の範囲内となっています。
たとえば、5TBのデータを3M/bpsの転送速度で移行すると単純計算で約20日、0.5M/bpsでは約116日かかる計算になります。皆様が想像していたのより、ずっと移行期間が長くかかるとお感じではないでしょうか?
ですから、クラウドストレージへの移行を検討する場合は、ファイルサーバのハードウェアやソフトウェアのサポート期限、リース期限などに応じて、できるだけ早めに計画を立てる必要があります。
ちなみに、私たちARIでは、転送速度はファイル数やフォルダ構成、平均ファイルサイズなどが影響していると考えています。ファイル数やファイルサイズが増えれば増えるほど転送速度は遅くなり、より長い移行期間が必要となる傾向があります。
以下に、ARIが検証した「Google ドライブへのデータ転送速度」の結果を掲載しますので参考にしてください。

Google ドライブへのデータ転送速度の検証結果
ファイル数 サイズ(GB) 実効速度(Mバイト/秒) 所要時間(hh:mm)
9,955 78.8 1.92 11:42
1,500 1.5 0.6 00:39
14,367 16.8 0.25 19:16

Google ドライブへのデータ移行にはPoCによる事前調査が必須

なぜ、Google ドライブに制限事項が設定されているのか、その理由はGoogleから公式なコメントが出ていないのでわかりません。おそらくですが、Googleは膨大な数のユーザを抱えているので、ある程度の制限を行わないと、Google ドライブのサービスそのもの、もしくは他のユーザになんらかの影響が生じる可能性が高いからではないかと考えられます。
また、前述した通り転送速度も公表されていないので、実際にどれくらいの速度が出るのかは、(数百GB程度のデータを転送するなどの)検証を実施してみなければわかりません。
Google ドライブへのデータ移行は、「制限事項に反した項目がないか」と「転送速度がどれくらい出るのか」を事前に把握して、問題がある場合には(下記の表にあるような)対策を講じる必要があります。
私たちARIが、Google ドライブへのデータ移行を、事前に現状を把握したうえで移行検証を行う「PoCフェーズ」と実際の移行を行う「本番移行フェーズ」の2段階にて実施している理由がここにあります。

Googleドライブの制限事項への対策例
問題 解決策
アイテム数が40万個以上 ・不要なファイルを削除
・下層のフォルダで1つの共有ドライブを割り当て
階層が21以上 ・不要なファイルを削除
・ある階層から下をZIP化
・ある階層から下を切り取って上位階層へ移動
転送速度が想定より遅い ・転送用サーバにおいて転送処理を並列実行
・転送用サーバを追加し複数サーバで処理を並列実行

たとえば、転送速度が想定よりも遅くスケジュールに間に合わないような場合はARIが提供するデータ移行ツール・システムである「ZiDOMA」の並列処理機能を利用したり、それでも間に合わない場合は転送用のサーバを複数用意した並列処理などの対策を提案させていただき、その上で本番移行を実施したりするようにしています。

今回はGoogle ドライブの制限事項について紹介しました。このような制限事項はGoogle ドライブだけではなく他のクラウドサービスにも存在しています。今後、それらについても解説していきます、ご期待ください。 なお、今回解説しているGoogle ドライブの制限事項は2024年5月15日時点のものです。Googleは頻繁に仕様が変わります。しかも、そのほとんどは予告なく変更されます。今後、ここで紹介した制限事項が変更されたり、新たな制限事項が加えられたりする可能性も十分にあり得るので、その際は新たな情報を追加していく予定です。

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